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総合法令出版

「富裕層のNo.1投資戦略」特設サイト

高岡 壮一郎(ヘッジファンドダイレクト株式会社 代表取締役社長)著

第4章 富裕層向け金融機関であるプライベートバンクと投資助言会社

第2節 富裕層向け投資助言会社

顧客側からフィーをもらう投資助言会社

次は投資助言会社について見てみよう。投資助言会社とは金融商品取引業者の1つで、証券会社等の販売会社(第一種金融商品取引業者、第二種金融商品取引業者)が、ファンドや発行体のために働き手数料を得るセラーズ・エージェントの業態であるのに対して、投資家側に立ち、投資家からフィーをもらいアドバイスをするバイヤーズ・エージェントの業態である。

「顧客の立場に立つ」と謳う業者の中には、IFAと呼ばれる金融商品仲介業者がいる。投資助言会社と紛らわしいが、金融商品仲介業者とは証券会社から、販売業務委託を受けて金融商品を売る歩合制営業マンという立場であり、顧客サイドではない。現在の金融商品取引法の枠組みの中では、中立・独立に投資家サイドに立つバイヤーズ・エージェントを生業にしているのは投資助言会社だけである。

投資助言会社は、投資信託・ファンドを投資家に提供する運用会社を選別する立場であり、運用会社側から金銭を受領できない。

ただし、ここまで明確になったのは、金融商品取引法上の規制が明確になった2014年6月以降のことである。2014年より以前は、投資助言会社がファンドから手数料や広告費をもらってはいけないという禁止規定がなかったため、各社判断はまちまちで、むしろファンド会社から何かしらの金銭を受領する投資助言会社が一般的でさえあった。

後述するが、後にここが大きな問題となる。

外為法改正により個人投資家の海外ファンド購入解禁

さて、改正外為法によって日本人が海外のファンドを購入することが解禁されたのが1998年である。いままで鎖国状態だった日本の富裕層は、海外の優良ファンドの実績を見て、こぞって海外ファンドを求めるようになった。この流れの中で、海外の金融商品を扱うことを専門にした投資助言会社が50社ほど登場した。海外ファンド専門の投資助言会社のオーナーは主に英国系であった。日本の金融商品の開発力よりも30年ほど先行していた欧米の洗練された金融商品を、鎖国から開国したばかりの日本に持ちこめば商売になると考えたわけだ。

日本人には世界の金融商品が届かない仕組み

ところが金融ビッグバンで日本人による海外ファンド購入が解禁されてから9年近くたった2007年になっても、まだまだ日本は鎖国状態であると識者に指摘される状況であった。

その年に書かれた大前研一氏の著書『大前流心理経済学』の中の「国民が金融商品情報から隔離されている」という章の中に、次のような指摘がある。

「国民が金融商品に対する情報から隔離されていることが挙げられる。現在の外為法では、日本人は海外でどれだけ資金を運用しても構わないことになっているが、現実にはそれを実践している個人はほとんどいない。(中略)外資ファンドに資金が集中してしまうと日本経済が破綻するため、財務省や金融庁によって、オフショア市場や外資ファンドに対するリスクが盛んに強調され、国民に対して『手を出さないように』啓蒙しているのである。この行為はほとんど詐欺的だ。(中略)当然国民は『海外での運用は自由だ』と言われてもシュリンクしてしまう」

「また財務省と金融庁による外資系金融機関への指導や規制も強い。資格を持たない人間が、特定のファンドや金融商品を勧めるような記事を書いたりテレビなどで発言すれば『免許もないのに勧誘している』と誤解され、すぐに警告を受ける。こうした指導や規制によって、日本人には世界の金融商品が届かない仕組みになっているのである」

大前研一氏が指摘するように、当時の財務省や金融庁が故意に鎖国をしていたのだとすれば、国民の経済的メリットに恣意的に制限を加え、憲法で保障されているはずの国民の財産権を侵害していたことになる。

そのような意図が本当に規制当局にあったのかどうかは別にして、個人投資の海外投資の自由は改正外為法で認められたものの、業界サイドを縛る金融関連法令ではその取り扱いにあいまいな部分が残っており、個人投資家にとって不便な時代であったことは事実であった。

その後、2007年9月に新しく金融商品取引法が施行され、規制環境が大きく変わった。このタイミングで規制強化を嫌った英国系の投資助言会社の多くが日本から撤退していき、日系も含めて合計10社程度になった。

筆者は前述の通り2006年から金融資産1億円以上の富裕層限定オンラインコミュニティ「YUCASEE ( ゆかし)」を中心とした富裕層ビジネスをしていた関係で、逆にこの規制環境の変化をルールが整備された好機と捉え、大手法律事務所のアドバイスを受けて、元々有していた投資顧問会社の商号を変更し、アブラハム・プライベートバンク(現ヘッジファンドダイレクト)を創業、海外ファンド専門の投資助言会社をスタートさせた。

2008年から2012年まではリーマン・ショック後ということであり、海外ファンドの中でも特にヘッジファンドへ注目が集まった。それはヘッジファンドがリーマン・ショックのような金融危機でリターンを出し下落相場でも儲ける手法があることが世の中に知れ渡ったからである。

その結果、金融リテラシーが高い層や富裕層を中心に、投資助言会社の支援でヘッジファンドを購入する動きが拡大した。『日本経済新聞』や週刊誌で、富裕層の海外投資ブームが盛んに報道されたのがこのころである。

これ以前は、海外の一流ヘッジファンドは通常は日本の個人投資家を積極的に相手にしていなかったが、リーマン・ショックによって機関投資家の資金が途絶えるリスクに気がつき、資金源の多様化のため、日本の富裕層を頼るようになり、アブラハム・プライベートバンクの助言を通じて、富裕層のマネーが海外ヘッジファンドに向かう流れができたタイミングでもあった。

海外ファンド投資助言会社の淘汰

ところが、海外ファンドブームには落とし穴があった。2012年から2013年には海外ファンドを舞台にしたAIJ事件、MRI事件が発生し、高利回りを謳う海外の詐欺ファンドに投資家のお金が吸い込まれるという、日本の金融史上初の大型不祥事が発生した。

この流れを受けて「海外ファンドは危険ではないか?」という機運になり、海外ファンドを専門的に扱う投資助言会社のほぼすべてに金融庁の検査が一斉に入ることになる。

その過程の中で問題になったのは、投資助言会社らがファンド会社から広告費等の名目で金銭を受領していたことだった。2007年に新設した金融商品取引法の解釈の中で、「販売」と「助言」という法令上の概念が曖昧であったところに、ファンド会社から金銭を受領する行為は販売業の登録(ライセンス)が必要という検査見解が金融当局から出された。

・『日本経済新聞』2013年10月7日「紹介」と「勧誘」の線引きは?

「『助言業全体に影響するかもしれませんね』都内大手事務所に在籍する金融商品取引法に詳しい弁護士は3日夜、うなった。証券取引等監視委員会が発表した投資助言業者、アブラハム・プライベートバンク(東京・港)への行政処分勧告文を読んだためだ。(中略)論争が起きたのは、金商法で『紹介』と『勧誘』の違いが曖昧になっていることにも原因がある。解釈に迷う条文も多い。今回、当局は検査結果を通じて法令違反か否かの線引きを出した形だ」

業界全体に対する規制の中で、2013年から2014年にかけて7社ほどの投資助言会社が、販売業に必要な登録がないにも関わらず販売行為を行ったとして、業務停止処分となった。アブラハム・プライベートバンクも、親会社がファンド会社から広告費を受領していたため、グループ全体として販売行為を行っていたと見做され、同様に業務停止処分となった。テレビCMをしていた業界最大手アブラハム・プライベートバンクの業務停止命令は大きく報道された。

海外ファンドを扱う投資助言会社の多くは、個人投資家から頂く投資助言手数料ではなく、専ら運用会社からの販売手数料を収入源にしていたため、このタイミングで廃業するに至った。一部の業者は規制を嫌いモグリの業者となって香港やシンガポールに拠点を移していった。

アブラハム・プライベートバンクは、個人投資家からの投資助言手数料を収入源にしていたが、親会社によるファンド会社からの広告料の受領が問題となったため、その受領を中止した上で、2014年4月に投資助言業務を再開した。

その後、2014年6月には投資助言会社はファンド会社側から金銭を得てはならない旨が規制上明文化された(金融庁監督指針)。

こうして海外ファンドを扱う投資助言会社は、1998年の外為法改正に端をなす富裕層の海外ファンドブームで英国系を中心に50社にまで増え、金融商品取引法が成立した2007年に10社程度に集約、2013年から2014年における海外ファンド投資助言業界に対する規制強化の結果、最終的に数社に収斂されることになった。

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富裕層のNo.1投資戦略 ヘッジファンドダイレクト株式会社代表取締役社長 高岡壮一郎著

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タイトル 富裕層のNo.1投資戦略
著者名 高岡 壮一郎
ジャンル 投資/資産運用
サイズ 四六判上製
頁数 372P
ISBN 978-4-86280-544-7
税込価格 1,944円(本体1,800円)
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