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高岡 壮一郎(ヘッジファンドダイレクト株式会社 代表取締役社長)著

第3章 なぜ富裕層はヘッジファンドに投資しているのか?

第7節 個人が年利10%で運用する投資法との比較

これまでの考察の中で、投資を行うとして、資産運用を他人に任せるなら、過去運用実績で選ぶべきであり、その場合は、継続的に過去10年間年利10%以上の実績があるファンドや投資サービスが日本にはないため、消去法的に海外のヘッジファンドを選ばざるを得なくなる。そのような論理展開のもと、ヘッジファンド投資が合理的な選択肢であるとして本章まで話を進めてきた。

他方で、「自分で運用」して安定的に年利10%を達成したいと思われる向きもあるため、巷の投資手法について検討を加えていこう。

不動産投資で継続的に年利10%を目指す

自分で売買する投資法の代表的な例が、一棟マンション購入等の不動産投資である。

銀行からの借り入れが容易で投資にレバレッジが効くこと、減価償却を落とせるため節税になるという2点において、有効な施策である。

書店には「不動産投資で年収1億円」などというタイトルの本が並んでいるが、年収1億円から各種諸コストを引いた実質手取りが記載してある本は少ない。不動産投資業界では「表面利回り10%は、実質手取りで3%程度」とも言われる。それは、法人における法人税や、個人における所得税、購入時の諸コストや、保有期中の税金、購入した瞬間に価値が下がる不動産を売却した際の譲渡損益を考慮すると、そのような数値に落ち着くからである。

個人投資家で多いのが、表面利回り10%の築古中古アパート一棟を購入したものの、物件を売却した際に買値より下がっており、それまでため込んだキャッシュフローを全部吐き出すほどの売却損を出すことである。

純収益(NCF 運営収益から費用を引き敷金等の運用益を加算)を還元利回り(キャップレート)で割り戻したものが収益価格となるが、大和不動産鑑定によると、2016年において、都心部のオフィスでは3~4%台が目安となる。賃貸マンションでは東京都心部で4~5%台となる。これが不動産価格の目線であるから、不動産投資において純利回り10%以上は困難と言える。

もちろん、自己資本を少なめにして銀行借入でレバレッジをかければ、一見、投資利回りが高く出る。たとえば、1億円の不動産から年間300万円の賃料があがるとして(年リターン3%)、物件価格1億円のうち、3割を自己資金、7割を借入で賄った場合、自己資金3000万円に対しては利回り10%が出る計算になる。

ただし、レバレッジをかけて出た投資利回り10%と、ヘッジファンドに無借金で投資して得られた投資利回り10%とは単純に比較すべきではない。

また、不動産をタイミング良く安く買って高く売れば儲かるだろうと思われるかもしれない。安く仕入れた築古案件を再生転売するバリューアップや、土地から建物を開発するという手法があるが、これはもはや投資の領域を超えた不動産事業そのものである。これが実はいかに難しいか、という話として不動産業界で伝わる逸話がある。

まず、日本で不動産の売買(短期売買)で長期的に成功した新興業者はいない、という。なぜなら、すべて1990年代初頭のバブル崩壊で資金繰りが悪化して消えていったからである。生き残ったのは、森ビルのようなビル賃貸業や、不動産の価格変動リスクをとらず、それを投資家に転嫁できた仲介業だけである。

次に、バブル後、2005年の東京ミニバブルを乗り越えて、日本の新興開発業者で成功した業者はいない、という。なぜなら、金利が安いときには銀行融資が出るため積極的に土地を買い進めることができ、新興ディベロッパーの起業が相次ぐが、金利が上がった途端に不動産価格が下がり、不動産価格が下がると銀行は融資を絞るから、資金ショートによるサドンデスが訪れる。そのような中、三井、住友等の銀行と結託している財閥系大手は、破綻した新興不動産会社が持っていた優良な資産を底値で買うため、さらに財閥系は繁栄していくという話である。

つまり、景気サイクルの波乗りを、ローンを使ってサバイバルすることの難しさがこの逸話にあるのである。ローンを引きながらバリューアップや短期売買、開発に携わるのはプロの不動産業者でも勝ち目が薄いとされている中で、個人投資家が手がけるには荷が重いと言えるだろう。

では、優良な一棟マンション・アパートを保有して長期的に賃料収入を手に入れるインカムゲイン投資はどうか?

この点については、不動産を長期投資することのリスクは、従来では考えられないほど上昇しているため、過去の成功法則は通用しない。過去10年間で土地価格と人口の両方が増えたのは47都道府県で唯一東京だけである。固定資産税と都市計画税は毎年約1.7%であるから、地価が上昇しない限り、持っているだけで評価額の▲1.7%の損が出る。

そして、これからは東京の人口も減っていく。2016年の東京の人口は1361万人だが、2020年から減少トレンドになる。区による格差はすでに広がっており、厚生労働省人口動態統計によると、新宿区、豊島区、杉並区、足立区、北区、葛飾区、大田区ではすでに、人口(出生人口-死亡人口)が減っている。

さらに、国土交通省の試算した、首都圏沿線別の2005年から2035年までの人口増加率データによると、現役世代であるところの生産年齢人口が増加するのは東急田園都市線だけである。東西線は▲14.3%、小田急線は▲19.3%、中央線(五日市線・青梅線)は▲20.9%、日比谷線(東武伊勢崎線)は▲36.1%だ。

東京23区の空室率はすでに34%。3戸に1戸が空家という過剰供給状態である(トヨタ系不動産調査会社タス調べ)。それにも関わらず、他の先進国と異なり、住民の数に応じて新築する建物の数を制限する規制が日本にはないため、人口が減るにも関わらず新築が毎年100万戸も建ち続けることになる。野村総合研究所によると、2033年の全国の空家は約2000万戸と推定され、現在の東京都民がまるまる収容できるほどの空家が日本中に溢れ返ることになる。

その中で、不動産投資家・大家であるあなたの投資物件は、本当に選ばれるのであろうか。もはやピカピカ立地のエリート物件しか家賃を稼げない時代である。

不動産の資産の入れ替えと言えば、「田舎の土地から都内のタワーマンションへ」という形で不動産から不動産への入れ替えを不動産業者から勧められるものである。不動産が趣味で好きな人ならそれでよい。しかし、実質的な資産(将来の購買力)を増やしたいなら、手元不動産を売却して、ヘッジファンド等の他の高利回りアセットクラスに転換するのも1つの防衛策と言えるだろう。

高利回り債券で年利10%を目指す

『日本経済新聞』等に「年利率9.62%期間3年、円貨決済型ブラジルレアル建て社債(2015年発行)」という高利回り債券を販売する証券会社の広告が掲載されることがよくある。

社債という仕立てになっているが、要は新興国の国債の高利回りを享受しようという商品だ。

これは一見高い利回りに見えるが、運用終了時点の為替差損(2011年~2016年の5年間でブラジルレアルは約40%下落)で結局、利益にならない可能性も高い。金利平価説に立てば、高金利通貨(レアル)は低金利通貨(円)に対して金利差分だけ弱くなるというわけだ。またそれ以外にも、証券会社の両替手数料(約4%)も大きく、トータルで利益が出ない可能性は高いだろう。そもそも同国の通貨が将来下落する可能性が高く、国の信用力が低いからこそ(信用リスクが高いからこそ)、高い債券利回りで販売されているわけだ。

同じような話として、「カンボジアの米ドル建て定期預金が年利6%」という話がある。これは金融リテラシーが低い層を狙った儲け話の1つで、「定期預金」という言葉に安全性を感じてしまう日本人だけが関心を持つ代物として知られている。常識のある人なら誰でも知っているが、カンボジアという国はムーディーズの格付けで「NOT PRIME」(投資不適格)、つまり信用リスクが高く、預けたお金が返ってくる可能性が低いとされているわけだ。わざわざ自分の現金を危険エリアに拘束された上で、全損する危険を冒してまで年6%のリターンを取りに行く行為は、まったくリスク・リターンが見合わないと言えるだろう。

太陽光発電で年利10%を目指す

「太陽光発電で単年度利回り10%。20年間電力買取保証」という話がある。太陽光発電は初期投資として借地に設備を建てる場合が多いが、20年後には設備は老朽化した上で、土地を返すことになる。これは結局、「年10%の社債を購入したが、20年後にその会社が破綻して元本がゼロになった」ということと同じである。

元本に対して単年10%のキャッシュフローが20年間出て、手元に投資額に対して200%の現金が残ったとしても、20年間の年平均リターンは3.5%(複利)にしかなっていないわけである。

新興国債券にしても、不動産投資にしても、太陽光発電にしても、投資は出口時点におけるインカムゲインとキャピタルゲインの合計によって儲けが決まるが、多くの投資家が入口で片方しか見ていないのである。結局、儲かるのは入口の物件販売で手数料を得た証券会社や不動産販売会社だけであろう。

節税で年利10%を目指す

日本はGDP対比の債務という面で、先進国で一番財政が悪化しているため、不可避的に増税が進行するトレンドになっている。税金を決めるのは政治であり、政治は大衆の意向で決まる。大衆は富裕層に矛先を向けがちである。

2016年現在、個人にとっては住民税と復興税を含めて最高税率は56%、相続税は55%で、フローとストックの半分以上が没収されることになる。

実は、給与所得者のわずか5.5%(給与所得900万円超)の人が、所得税全体の53.8%を払っている。さらに、給与所得500万円超に相当する約27%の人が、所得税全体の80%を払っている。

言うなれば、給与所得者の約73%の人は、所得税をわずか20%しか負担していないわけで、1人の高額所得者に残りの3人が頼り切っている構造である。

こうした状況の中、努力して財を成した富裕層や勤勉な高額所得者の間では、不公平感が強まっている。

そこで「半分も取らずに、せめて25%くらいにしてくれないか?」と税金を「半分」にするために資産家は頭を悩ませる。資金を2倍にするには年率10%で7年運用すればいい。言葉遊びであるが、7年かけて税金を半額にできたら利回り10%を実現したのと同じだと考えて、ここでは節税について考えてみよう。

まず資産家は相続税対策を行う。特に都心のタワーマンションを買って相続税評価を下げようとしている。ざっと7割から8割ほど評価額を下げることができる。新聞では税務署による「タワマン節税封じ」が報道され、世間は大いに溜飲を下げているわけだが、計算してみると明らかなように、規制によって節税効果は封殺されておらず、いまだに有効である。タワーマンションのほかに、銀座や表参道等の一等地は相続税対策に向いている。ソフトバンクの孫正義氏でさえ、相続税対策のために銀座のティファニービルを320億円で買ったのだと報道されている。

なお、資産家の中には海外に資産を移そうという動きがある。2011年にはユニクロの柳井正氏がオランダの資産管理会社に自社株を移した。2012年から株式売却益に対する増税が決定したからであろう。そのような中、政府はこの流れに歯止めをかけようとしている。

  • 2014年1月1日「国外財産調書制度」(「5000万円超の国外財産についての申告制度」)の創設(刑事罰あり)
  • 2014年7月国税庁富裕層対策プロジェクトチーム発足
  • 2014年10月21日税制調査会の第5回基礎問題小委員会に、個人富裕層が日本を出国し非居住者となる際に保有する株式等の含み益に課税する「出国税」のプランが財務省より提出される
  • 2015年1月19日「海外の口座情報監視」について『日本経済新聞』の報道「ケイマン・BVI法人を使った節税・脱税に関する捕捉の強化」
  • 2016年1月から、財産債務調書の作成義務づけ

相続税をゼロにするためにシンガポールに移住する人も以前はちらほらいたが、現在は親子共に10年以上外国に住まないと相続税が免除されない方向で2017年度税制改正大綱の検討を進めているため、資産家の海外移住ブームは一服したと言える。節税のためシンガポールに移住したある資産家は、「暇すぎて牢屋のようだ」と漏らしていた。

また、2010年代になると、たとえ合法的な節税であっても世間からバッシングを受けるようになった。スターバックスやグーグルの国際租税回避スキームがやり玉にあがりだしたのである。

日本でも、ユニクロの柳井正氏が資産を海外に移転した矢先に、世間からブラック企業扱いされて叩かれ出したり、若い起業家も上場や企業売却の前後でシンガポールに移住したとなれば、世間からあることないことを言われて叩かれることになるので、「金のためには世間をも敵に回す」という意思決定が必要で、それは非常に重い決断になる。

現在の日本の税制では、有能な人材が日本で起業し、日夜汗水たらして頑張って成功した結果、儲けが出ても法人税で半分取られて、会社から自分に支払われる役員報酬や、自分の会社の配当にまで再び税金を半分もかけられる。その会社を事業継承すると、また半分を相続税で持っていかれるわけである。

したがって、優良資産に投資をして、年利10%で運用して資金を倍増させておかない限り、日本では手元現金がなかなか増えないと言える。投資でお金を増やす分には文句をつけてくる人はいない。そこで次はいよいよ過去実績で年利10%以上10年の実績のあるヘッジファンドを日本居住の個人投資家がどのように購入するかについて解説する。

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富裕層のNo.1投資戦略 ヘッジファンドダイレクト株式会社代表取締役社長 高岡壮一郎著

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著者名 高岡 壮一郎
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頁数 372P
ISBN 978-4-86280-544-7
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